聖闘士☆星矢
今年もクリスマスがやってきた。
夫は12月24日生まれで、彼の父親に「聖なる夜に生まれたので聖矢」と名付けられそうになったそう。もうちょっとで「聖闘士☆星矢☆☆☆!!」とバカにされた人生を過ごすところだったらしい。
「いや、名前の件は本当に助かったよ。母親が常識的な感覚で」
そんなギリギリセーフの人生を歩む夫ももうすぐ41歳になる。
彼は今転職や進学を検討している。
転職すれば色々待遇が改善されるのは確実みたいで、彼にも仕事の花道を歩んでほしいと思う。
夫に転職や、進学を勧めるなんて、おせっかいなことをしているのかもしれない。だけど、男性社会は肩書の世界で、学歴、職業、収入で人を判断してしまう。サラリーマンでどんなに社内で評価が良くても、家庭でいい夫でも、世間は残酷。
そういう生き方を好まない男たちもいる。起業したり、芸術家だったり、仕事は労働と割り切って別に世界があれば、男社会のルールなんて関係ないだろう。それは、それで、いい。
でも、夫はどっぷり男社会に浸かり、男社会の評価制度で自分を評価してもらいたがっている。
夫は、目の前の人に力になりたいと考える人だ。男性では稀なほどのコミュニケーション能力に温和な性格。仕事スキル、誠実さ。そして、従順。だから彼の純粋さにつけ込んで、経営者は彼を自分の都合のいいように扱おうとしている。
会社にとって都合のいい男
夫の欠点だ。
彼からその会社の話を聞いただけで、私はその会社のあり方がどのようなものか。社長の人柄、経営の経緯、将来性、過去に何があったか。何がその会社の問題点か。手に取るように背景が透けて見える。・・・私は、感がいいのだ。
だから、転職を勧め、私も一緒になって夫の将来に対して考える。夫の良さが最大に引き出されて、かつ、収入を得られる方法を。
でも、本音は、好きにすればいい、と思っている。私は自分の人生を切り開いていけるタイプの人間だから、夫もそうすればいいと思う。自分のやりたいことをとことんやってみればいいと思っている。
だけど、それは許されない。男社会の中で生きていくには、もっと、肩書とか、社会的地位とか、収入とか、やっぱりいるみたい。それを肩書のある男たちに諭されると私は反論ができない。
結婚したことに、ものすごい責任を感じている。私と結婚したのに、この人を世の中に送りだせなかったらどうしよう、と。
夫には夢があってそれは、そのうち叶うらしい。なんとかなるらしい。夫の、のんきで気楽な展望を昨日聞いて、私は絶望した。
私はどうしたらいいのかな?
ちなみに彼は誕生日祝いの物品を要求してきた。前から欲しがっていたオーク材のチップ入りの抱き枕だ。オーダーメイドの特注品だ。
人生もオーダーメイドで注文して、簡単に手に入ればいいのに。