モテの聖地へ行こう4
2020/01/10
「やめてくれ」夫は言いました。「君、露出狂じゃないか。そんな恰好でジム行かないでくれ」
昨日調子に乗ってレギンスとブラトップでジムに行ったと報告すると夫に怒られました。
昔、Kちゃん、という女の子がいました。銀座のホステスと銀行を掛け持ちしている子できれいな子でした。飲み屋で知り合って超モテ子でした。「モテの聖地」にいる女です。
私は彼女に「私もモテたい!」と言いました。
するとKちゃんは「ちひろちゃんならできるよ。とにかく笑顔で相槌打てばいいんだよ」というので、Kちゃんスマイルを練習して飲み屋で実践しました。
すると超モテました。チヤホヤ半端ない感じ。Kちゃんは「ここの奴らなんか相手にしちゃだめだよ。皆仲良しなんだよ。なんでかわかる?クスリやっているから仲間意識が強いんだよ」
「じゃあなんでKちゃんはこの店にいるの?」
「お酒。ほら、皆ラリッてお酒何注文したかわけわかんないの。このテーブルの勝手に飲んでいいんだよ。皆優しいし居心地いいよね。でも、それだけ。今度高級ホテルのバーでも行こうか。声掛けてくる男のレベルが全然違うよ。クルージングとか海外旅行とか普通に連れていってくれるよ」
「ええ、そんな人と話合うかな?」
「会話なんて、適当に相槌でいいのよ。そんな男、自分の話しかしないんだから、適当でいいのよ」
「すごいね、Kちゃん。男の人に敷居がないんだね」
「男の集まるところなら私、どこでも生きていけるのよ。どんな所でも声をかけられるのよ」
「Kちゃん、彼氏って?」
「前は某有名社の息子と付き合っていたけど、バカで別れたの。私男運ないのよ。今はこの人かな。写真見る?かっこいいでしょ。洋服屋の店員なの。凄く優しくて話何でも聞いてくれるの。私がモテても寛容なの。この人には彼女がいて私、この人のセフレなの」
フランス人がナンパしてきて凄い勢いで口説いてきました。私はモテ子の練習中なので笑顔で対応。英語だけどKちゃんはニコニコ対応。フランス人はしつこかった。明け方まで口説き続け、さらにはKちゃんの家までついてきて家に上がり込もうとしていました。Kちゃんは鉄壁のスマイルで対応していたけど、私はもう疲れて笑顔は消え去り鬱状態。しかも笑い続けて顔が筋肉痛で痛くて辛かったです。フランス人は途中から完全にKちゃんに狙いを定め口説きまくってまくってまくって、ようやく諦めたのが10時くらい。
好きな人でないのに口説かれてKちゃんは全然嫌じゃないみたい。私は・・・もう、いいです。もう、モテなくていい。このままでいい。普通でいい。モテ入門から1日で卒業しまーす!人形みたいにニコニコしてまでモテたくない!と心の底から思いました。
それを言うと、
「ちひろちゃんにはわからないわよ。貴女みたいにフツーで、何の苦労もなく平和で、悩みもない人には私の気持ちなんてわからないのよ。父親が浮気を繰り返して母を苦しめて。でも私は母を慰められないの。父親にそっくりだから、母は私を見るのが辛いの。私の価値はね、父と同じ異性を虜にすることだけなの。父は私には優しかったの」
「私にも色々あるわよ」
「ないわよ、ないのよ!貴女の両親仲良かったでしょ」
「仲良いわ」
「わかるのよ!そんなの見た瞬間わかるのよ!貴女は私とは別の世界の人間なのよ。生まれながらに恵まれた人間なのよ!私はイギリスに留学したいの。あの国には私を変えてくれる何かがあるのよ」
「ないわよ、そんなの。一緒よ」
「あるのよ。ないとダメなのよ。私の夢を取る貴女なんて嫌い」
これを機に彼女との友人関係は消滅しました。モテ子の正体は空っぽの心に闇を抱える女でした。「モテの聖域」には様々な人種がいる。モテたいなら筋肉痛になっても笑顔を絶やすな!自我を消滅させろ!